2024/07/24_脳から見た人間社会社会は平和でなくてはならない
脳いうもの。
大脳から脊椎までの中枢神経系が生命を支える
脳を語る第一歩として、人間の脳の基本的なスペックを確認しておきましょう。
生命維持から知的活動まで司る2%
人間の脳は、1200~1600グラム。平均体重の2%前後とされています。統計的に男性が女性より1~2割大きくなっていますが、性差による機能の違いか、単に男女の体格の違いかは、明確にはわかっていません。
脳を構成しているのは、約一割、三億個の神経細胞と、その活動を支える残り九割のグリア細胞です。
昔はグリア細胞の働きがよくわからなかったため、「人間の脳は1割程度しか使われておらず、残りの9割は眠っている」と言われていました。
大脳は、主に外側の大脳皮質、下側の海馬など大脳辺緑系、内側の大脳基底核に分けられます。これに臭覚以外の感覚情報を整理する間脳まで含めて、大脳呼ぶこともあります。
感覚や思考を司る大脳に対し、身体部分の滑らかな動きの制御は小脳です。そして大脳・小脳からの司令や、脳に伝わる感覚情報等を取り扱う神経の束と自律神経の中枢として呼吸・心拍数・血圧や、意識と覚醒を制御しているのが脳幹です。
主に大脳・小脳・脳幹を「脳」と言いますがそれに連なる、脊椎(背骨)の中央を貫く脊髄までがひとかたまりのシステムです。これを「中枢神経系」でと呼びます。この大脳から脊髄までは、髄膜という比較的固い膜に覆われ、様々な外的脅威から守られています。膜内の各器官は髄液という液体の中に浮かび、特別なフィルター付の血管によって血液中の脳に好ましくない物質が運ばれないように特殊な隔離防御がされています。
人間の脳
ドラム缶10本分にあたる2000リットルの血液が1日に脳に運ぶ酸素の量60キログラムにも及ぶ。
人間の記憶というのは、どのくらい残るものなのでしょうか ?
記憶の残し方消し方
人間、子供の頃の楽しい思い出や、思わず死を覚悟した恐怖体験などは、何十年たってもよく覚えています。しかし、別に特別な日でもない半年前の夕食のメニュー等を逐一覚えている人はあまりません。しかし、なぜ古い記憶が鮮明に残っていたり、ちょっと前のことをすっかり忘れていたり、人間の記憶には、扱いの差があるのでしょうか。
実は、人間の記憶力は、基本的にそれほど長く持続しません。晴れがましい記憶や嬉しい記憶、逆に悲しかったことやショックだったことは、長く覚えていますが、それは、経験後、何回も何回も自分で記憶を反芻して、覚える努力をしているから、長期的な記憶として残るのです。
記憶は、元に、ワーキングメモリと呼ばれる今注目しているものに対して使う、ごく小さな記憶エリアに格納されます。
しかし、このワーキングメモリの容量は数字七つ分程度と極めて狭いため、次のことを考え始めると、もうどこかに追い出されて忘れてしまいます。
それを長期記憶にするには、まず海馬に残される近時記憶にしなければなりません。近時記憶では、1時間で半分以上忘れてしまいますから、中学生が英単語を覚えるように何度も何度も唱えなおし、思い返すことで、記憶を更新し印象深くします。
これを精緻化リハーサルと言います。リハーサルを繰り返すことで、記憶は印象深い言葉として残ります。そして長い時間をかけて脳が睡眠中に行う記憶の整理を経て長期記憶として固定します。
まぶたの裏に様々と思い浮かぶ思い出の日々。
それはどうやって保存されているのでしょうか。
数々の要素をつないだエピソード記憶
エピソード記憶は、時間や場所、その時の感情が含まれる記憶です。この感情は記憶の質に影響すると言われています。
自伝的記憶はエピソード記憶の一部ですが、同じではありません。例えば、祖父母が死んだ日のことや初めて恋人に告白した日の思い出は自伝的記憶ですが、毎日の通勤、通学経路の道程は、確かに自分で経験したことであり、エピソード記憶としてそのシーンを覚えていたとしても、自分の人生にとって重要な意味を持たない物です。
そのため、毎日の通勤、通学の記憶は自伝的記憶には含まれません。
意味記憶が、何回も繰り返して覚える努力をしたり、記憶術を使ったりと、特殊な方法を取らないとなかなか固定しないのに対し、エピソード記憶はたった1度の記憶でも近時記憶に固定されます。しかし、昨日の朝食も一昨日の朝食も、日常の中で変わりばえのしないシーンは、食卓の様子や、いつも食べている食品パッケージの絵、食器、そして味などに関する意味記憶を残して、エピソード記憶としては、忘却していきます。
エピソード記憶は、それを構成するいろいろな意味記憶を互いに意味付けのネットワークでつないだ物と考えられています。印象に残る経験は、一度記憶されたエピソード記憶の中から何度も何度も思い出されることにより、ネットワークの経路が使用されるたびに太くなり、印象に残るエピソード記憶となるわけです。
手続き記憶
スポ根系特訓型の記憶
体で覚えるということがあります。泳ぎや、楽器の演奏、自転車に乗るといった体を動かすことは、教科書を読んだり誰かに手本を見せてもらったりしただけではなかなか身につきません。
こうした、体を使う技能の多くは、動きのデータベースである小脳や大脳の運動野、それらの覚えている動きを現在の体の体勢や、やりたい目標に合わせてアレンジする大脳の高次運動野によってなされています。しかし、最初は試行錯誤しながら何とかうまくいった動きを、何度も何度も練習することによって手続き記憶として繰り返すと、咄嗟にその動きが行えるようになります。武道の「形」や、テニスの素振りのように、何度も繰り返し、筋力アップとともに動きを体に覚えさせるのはどんなスポーツにおいても基本です。こうした動きに関する手続き記憶は大脳の中で、陳述記憶のように海馬に格納されるのではなく、運動を司る大脳基底核に格納されていることがわかっています。人間の場合は、大脳皮質の運動野・高次運動野が大脳基底核に運動指示を出しますが、鳥類までの動物においては、大脳基底核が運動の最高中枢です。
同じように、長い文章の暗唱も繰り返すうちに身につける技能です。「御経を読む」というのが運動技能の記憶である手続き記憶だと言われると、何か不思議な気もしますが、どうも、踊りの振り付けを覚えるのと同じだと考えると、ちょっとわかる気もします。
人間の脳の優秀なところは、いろいろな記憶の保存を適材適所で行っているところです。
海馬と言うバッファが情報を受けとめる
経験した出来事は、海馬と言う非常に素早く記憶を取り込む 部位が、その場で記憶します。
しかし、この海馬は、使われない情報はどんどんと削除して、記憶をスリム化していきます。具体的にいうと、別にその時はちゃんと覚えていて、直後に「この人と今日同じバスに乗ったか?」と聞かれたら正しく答えられたであろう。通勤バスにたまたま乗り合わせた人の顔でも、三~四日経ってから聞かれると、覚えている可能性は低くなっているということです。脳は、経験の中から自分が必要としない記憶をどんどん削っていきます。というより、必要として覚えていよう思う記憶以外は、基本的に切り捨てて節約するのが脳の本質です。生物は元来、節約できるところはできうる限り節約して、省スペース省エネで生き抜こうとするものですから、使わない記憶の忘却は当然の機能でしょう。
大脳皮質の意味記憶と、それをつないでエピソード記憶とする神経経路は、どちらもしつこいほど頑丈な記憶の座ですが、当然、そこに記憶を定着させるためには、何回も何回も記憶を反芻して刷り込んで行かなければなりません。
また意味記憶は、神経系によるつながりからエピソード記憶や、よく働く連想を形作りますが、経文など長句、特に意味が把握できていない文章の暗唱は踊りや歌と同じような体を動かす大脳基底核が担当します。
これらすべてを使い分けて人間の記憶は成り立ちます。
脳内伝達物質
働きのわからないものも多い
50種類以上確認されている神経伝達物質ですが、働きが解明しているものは20種類程です。
アセチルコリンは、神経を興奮させます。学習・記憶・レム睡眠や目覚めに関わっており、一番初めに構造や機能が解明されました。過剰放出はパーキンソン病に、放出不足はアルツハイマー型認知症につながります。
ノルアドレナリンは、神経を興奮させ、不安や恐怖を引き起こします。目覚め、集中力、記憶、積極性、さらに痛みを感じなくするなどの働きもあります。
ストレスと強く関連し、ストレスがノルアドレナリンの働きを高めます。過剰放出は不安障害に、放出不足はうつ病に繋がります。
ドーパミンは神経を興奮させ、快感と陶酔感を与えます。攻撃性・創造性・運動機能などに関係します。過剰放出は精神分裂病・不安障害に、放出不足はパーキンソン病、うつ病につながります。
セロトニンは、行動には抑制的に働きますが、気分は興奮させる方向に働くという、なかなか複雑な伝達物質です。体温調節、欠陥や筋肉の調節、攻撃性の調節、運動、食欲、睡眠、不安などに関係します。過剰放出は不安障害に、放出不足はうつ病、偏頭痛に繋がります。
ギャバ(GABA)=γアミノ酪酸は、神経の過剰反応を鎮めます。不安鎮静、睡眠、痙攣の鎮静に関係します。また筋肉の緊張を解きます。
グルタミン酸は、神経を興奮させます。てんかんの発作に関わっています。
脳波
脳波には
多くの種類がある
脳波とは、大脳皮質の140億個の神経細胞の表面近くにある多数の起伏突起に生じたシナスプ電位・後電位などの総和の電位変動を、主に頭皮上から誘導し増幅して記録したもので、脳の機能状態を簡便かつ無侵襲に検査することができます。
頭皮上に21個の電極を配置する国際10-110法が標準的ですが、研究目的の場60個もの電極を使い、仔細に観察することもあります。逆に、てんかん発作など、異常な脳活動があっても発見できない筋弛緩剤使用時や、神経変性疾患患者などの場合3~5個の電極で持続的に脳波を監視する持続脳波モニターという方法もあります。
また、侵襲が大きいのですが、開頭手術で脳裏に電極を挿入する方法は、通常の脳波検査では検出し難い異常波も脳底面などから観測でき、空間分解能も高まるので難治性てんかんの外科的治療の術前検査などで利用されます
脳波は周波数ごとに名前がつけられています
デルタ波(δ)1~3ヘルツ
シータ波(θ)4~7ヘルツ
アルファ波(α)8~13ヘルツ
ベータ波(β)14~30ヘルツ
ガンマ波(γ)30~64ヘルツ
オメガ波(ω) 64~128ヘルツ
ロー波(ρ)128~512ヘルツ
シグマ波(σ)512~1024ヘルツ
なおβ波とγ波帯地域境界周波数は28ヘルツであるとする説もあります。


